ヘヴィでダークでポップでコミカルで、そしてオペラ的でオーケストラでジャズな、そんな要素が「全部入り」のプログレッシブロックアルバム、それがA.C.Tの"CIRCUS PANDEMONIUM "です。2014年2月リリースの作品ですが、やはり何度聴いてもいいものはいいので紹介させてもらいます。
鎖で繋がれた音と、サーカスの表舞台と裏舞台両方が錯綜するようなSEが入り、幽閉されたような男のかすかなうめき声を交えた声が入るイントロダクションを経て、いきなり「終わり」を意味する"The End" で始まり、このアルバムの概要と言える内容の楽曲と言えます。 調教師が動物達を解き放ち、阿鼻叫喚となるサーカス。その混乱の中でサーカスのバンドA.C.TがShow Must Go On!(なにがあってもショウを続けなければいけない!)と叫び、アルバムの幕が開ける。"Everything's Falling" "Manager's Wish"で「墜ちた」サーカス団員と「支配人」をポップでモダンなメロディに載せ、"A Truly Gifted Man" では軽快でポップなメロディと裏腹に暗い歌詞とそれにマッチした悲哀のキーボード演奏が印象に残ります。中盤で「躁」と「鬱」を繰り返すようなサーカスの華やかな表舞台と暗い裏舞台を交互によぎらせるようなギミックがあり、犬の鳴き声のSEを織り交ぜて "Presentation" "Argument" "Look At The Freak" と短い曲が続き、さらに短いながらも強烈なインパクトの"Confrontation"と来て、サラ・ウェンデルフォードがヴォーカル参加したエモーショナルな"A Mother's Love"で人の子、人の心を思い出させるような演出が来たと思ったら、 "The Funniest Man Alive" 。ピエロを演じすぎて自我を、自分の顔を喪ってしまうブラックな内容を軽快なポップに乗せてなんともやりきれない気持ちにさせます。日本盤のボーナストラック"Scared" は、死刑宣告されたダンサーが最期のショウに赴く内容で、これもポップなメロディに悲壮感が漂います。そして、ここからがこのアルバムの最高潮。逃げ出すチャンスを与えられた団員を描く "A Failed Escape Attempt"、それに続く "Lady In White" でこのアルバムのクライマックスを迎えます。ここまで暗くブラックな歌詞もコミカルでポップなメロディの中に悲しげな雰囲気で一貫していたのに、、"Lady In White"の残酷で美しく儚い歌詞にアルバムを通して初めてのダークへヴェイでエモーショナルなギターインストが入り、鳥肌モノです。ラスト "Freak Of Nature" 、フリークスと蔑まれてきた団員が今までの人生の喪失感とやりきれなさを胸に復讐を誓うという曲で締められます。そして、ラスト曲のフレーズがまたイントロダクションに引き継がれ・・という内容です。このアルバムは1枚を通して一曲であるとも言え、そしてシネマチックな曲間の繋げ方といい本当によく練られています。 ラストのインスト&コーラスはDreamTheaterの名曲Sacrificed Sonsのフレーズをそのままオマージュしています。

A.C.T
マーキー・インコーポレイティド
2014-02-19

ジャケットに描かれた悪のサーカス団長が男を鎖で繋いでいるイラストですが、これは何が何を指しているのか考えさせられます。逃げ出せないブラック企業に縛られた社員を描いているのか、自分自身の闇が自分を縛っているのか・・・